―― Vol.2 サンプリシテ ――

 2018年1月にグランドオープンしたフレンチレストラン「サンプリシテ」
 代官山駅から徒歩約7分、白の外壁が映えるそのお店は、とても緩やかな坂道に面して佇むビルの2階にある。
 重厚な扉を開けて入店すると、相原シェフが自ら、やさしい笑顔で迎え入れてくれた。
 まず目に飛び込んでくるのは、8人がけの大きな一本もののカウンターテーブル。さらに視線を右奥に向けると個室にもなるテーブル席があった。

 さっそくカウンターに座らせていただくと、キラキラと輝く厨房が目の前に広がる。

― そう、ここはフレンチではまだ少ないオープンキッチンである。

  

素材にまつわるシェフの話は、もう一つの“調味料”
オープンキッチンで醸成する最新フレンチ。


僕の料理には、生産者の方や鮮魚店の方の意見が活きている。
その“話”をお客様にお伝えして、いっしょに召し上がっていただきたい。

― なぜオープンキッチンにしたのですか、とお伺いすると、そう話してくれた。

 今回の取材では、実際に食用のバラのこと、鰆(さわら)や鰯(いわし)、鮃(ひらめ)などの魚のこと、さらには器のことまで、料理をいただきながら、いろいろな話を聞くことができた。

 例えば鮃。「今日の素材は五島列島の8kgもの。グリルには大ものがいい。」そう言って両手を広げるシェフの目の前に、その大きな鮃が見えてくるから不思議だ。
 例えば鰯。「鰯は回遊魚。おいしいものを手に入れるために全国から取り寄せている。」鰯がぴちぴちと水揚げされる様が思い浮かぶ。
 鰆は、「もちろん漁師さんが船上で活き締め、少なくとも必ず血抜きをしてくれている」という。

 こうして素材にまつわるシェフの話に耳を傾けると、漁港や農園がイメージとして脳裏に浮かんでくる。そして料理を口に運ぶ。美味ひとしおである。
 サンプリシテは、オープンキッチンというスタイルと、何より相原シェフのお人柄で、来訪者にとても贅沢な時間を与えてくれる。

厨房に大切なこと。
それは何より“使いやすい”ということ。

 厨房について話を伺った。

 「この一列でフルフラットなカウンターが効率を高めてくれる。本当に使いやすい。」
 そう言うと相原シェフはまた、こだわりのカウンターを愛おしむように磨き上げる。日課としている1日3回の掃除も効率よく済ませられるという。同業の料理人をして「きれい」と言わしめたというその厨房は、担当した当社スタッフも「我ながら良くできた」と感慨深げだった、と話してくれた。

  

 それでは使いやすさのポイントをいくつか挙げてみたい。
 まず、同店ではフライパンは使わない。代わりに電気グリドルが活躍する。ソースを作る時はソースパンを直に置いてヒートトップのように使う。
 また、通路はすれ違いに気を使わなくて済むように、幅をゆったりと取ってある。
 さらに「経験の浅い料理人でも、これを使えば7割の仕込みはこなせる」というスチームコンベクションオーブンは、いまや何はなくとも外せない厨房機器だ。このスチコン、相原シェフ特製“もっちり”パンの焼成にも使用されていた。
 そして「カウンターの8人までならシェフ一人でこなせる」とも。人手不足にも対応できるのが、オープンキッチンのメリットといえよう。

・・・・・

 「サンプリシテ」 ―フランスでは「シンプル」という意味で使われているが、古仏語では「誠実さ」とか「正直さ」という意味が含まれているという。
 いい厨房はシンプル。だからこそ、誠実に素材に向き合い、素材を活かしたいい仕事ができるのだろう。

  

相原オーナーシェフPROFILE

1974年生まれ、神奈川県出身
1994年 神奈川県・葉山のレストランで働きはじめる。
2000年 渡仏  「アレクサンドル」(ニーム・1つ星)
「ジャルダンデランパール」(ボーヌ・1つ星)
「ルタンドヴィーブル」(ロスコフ・1つ星)
「ドメーヌドシャトーヴィユー」(ジュネーブ・2つ星)
2003年 帰国
2004年 「銀座レカン」 スーシェフ
2010年 「レヴェランス」(広尾) シェフ
2011年 「ヴァリノール」(荻窪) シェフ
2017年12月「Simplicité (サンプリシテ)」を代官山に独立開業する。

―― SHOP INFO ――

Simplicité

サンプリシテ

〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町3-9 アヴェニューサイド代官山1 2F
Tel.03-6759-1096
・12:00~15:30 (L.O.13:30)
・18:30~23:30 (L.O.20:30)
・定休日 月曜日、第1火曜日(祝日の場合翌日)

http://www.simplicite123.com