―― Vol.10 ピッツェリア・ダ・グランツァ ――

 坂本大樹シェフと言えば、初出場した「ナポリピッツァ職人選手権日本大会2012」での優勝を皮切りに業界の注目を集め、2016年に独立して東京・目黒区に『ピッツェリア・ダ・グランツァ』を開業して以来、常に「攻めの姿勢」で同店を切り盛りしてきたピッツァ職人である。現在では飲食店コンサルタントとしても活躍する傍ら、当社が2020年5月に発売した電気ピッツァ窯"カリノ"では開発監修に携わっていただくなど多方面で活躍をされている。今回はそんな坂本シェフに「攻めの姿勢」と「お店作り」のこだわりをうかがった。


■この日訪れたのは洗足池にある2号店

独立して一番良かったこと。それは"スピード感"

 ----洗足の本店をオープンされたのが2016年ですので今年の12月で5周年になるかと思います。独立開業以来のこれまでを振り返ってみていかがでしょうか。


■坂本大樹オーナーピッツァイオーロ

"とにかく独立して良かった!"と感じてます。というのも、自分で"何かをやりたい"と思ったときに、どうしても組織にいるとスタートが遅いんですね。それが独立してからはすべて自分の裁量で進められるので、今では自分が"やりたい"と思ったときにスピード感を持って行動に移せる。これが僕の性に合ってました」

そのスピード感はコロナ禍でも遺憾なく発揮されている。

「去年の4月に"このままではイートインが危ない"と感じたので、すぐに冷蔵庫やウォーマーを導入して物販事業を立ち上げたんです。これもかなりのスピード感で対処できた。最近だとリヤカーを導入して行商も始めました。ピッツァとかを荷台に入れて売り歩いてるんですけどこれが凄く反響が良いんですよ。最近では"グランツァの旗も作ろう!"と思い立って、そろそろ納品されるはずです」

----何かアイディアが沸いたらすぐに実行すると

「そうです。もう即効で。決断したことがすぐにカタチになるというのは大きな強みですね。その行動力のおかげなんでしょうけど、開業以来コロナ禍でも順調に来ているし、スタッフもかなり増えました。今の状況で気持ちが落ち込んじゃってる飲食店のオーナーさんもいらっしゃると思うんですけど、僕は"攻撃は最大の防御"と思って"攻めの姿勢"でとにかくできることは何でも前向きに取り組んでいます

■現在大好評の"行商"。取材後に旗も納品された模様。


「まさか優勝するとは思わなかった」日本一に輝いたあの日

----「ナポリピッツァ職人選手権日本大会2012」で優勝したときのお話をきかせてください。

「あのときは当時いたお店を6月に立ち上げて忙しくしている中で、"9月にこんな大会があるんだ"とたまたま知ったので応募してみたんです。そしたらなんと本選まで勝ち上がってしまった。もう決勝当日の朝は緊張で極限状態でした(笑)。なんとかピッツァを無事に焼き上げた時点で"ああ、良い経験ができたなあ"って思ってて、結果発表のときに審査員のイタリアの方が「ヒロキ・サカモト」って呼んでくれたんですけど僕気が付かなくて(笑)、2回目に名前を呼ばれてようやく自分だとわかったんで表彰台に上がりました」


■大会での表彰の様子。これが坂本シェフのターニングポイントになった。

「大会後は雑誌に掲載されたりテレビの取材もあったりして、だんだんと名前も知っていただけるようになりました。優勝した当時は本当に無名の状態だったんで、よくここまで来れたと思います


お店づくりのキーワードは「アットホーム」

----お店づくりのこだわりについて教えてください。

「キーワードは常に"アットホーム"です。入りやすい雰囲気と親しみやすいスタッフ。そのためにはお客様とのコミュニケーションがとにかく重要。極端な話ですが、僕は接客:7に対して料理:3くらいの割合で考えています。それぐらい接客というのは大事なんです。なぜなら、飲食店は食事の前に必ずスタッフと接する瞬間があるわけで、そこのファーストタッチが印象良くないとどんなに美味しい料理が出てきても満足度は半減してしまう。逆に接客が良ければ料理も含めたトータルの満足度が上がるわけです」

そこには坂本シェフの立地に対するこだわりも伺える。

「洗足店、洗足池店ともに住宅街に出店していますが、それは僕がお客様とのコミュニケーションを重要視しているからなんです。これまでも大型商業施設から出店の打診が何回かありましたが、やはり僕はお客様とお話するのが好きですし、しっかりコミュニケーションを取りたい。そうするとやはり住宅街が一番良いんです」


通販事業の立ち上げ。自ら監修した電気ピッツァ窯"カリノ"を導入

 昨年12月、コロナ禍の収束がなかなか見えない中、坂本シェフは非接触型のビジネスモデルとして通販事業の立ち上げを構想。もちろんスピード感を重視する坂本シェフのこと。すぐさま自ら監修した当社の電気ピッツァ窯"カリノ"を導入する。

 

■通販用に導入された当社の電気ピッツァ窯”カリノ” 。
■この限られたスペースに導入できたのも"カリノ"ならでは。

「通販事業を立ち上げようと思ったときに、"カリノ"の導入が真っ先に浮かびました。なぜなら現状使っている薪窯で通販用のピッツァも焼成するとイートインのオーダーとバッティングしてしまう、かといって薪窯の増設は大がかりだしコストもかかります。しかし"カリノ"なら電気式だから導入しやすいし、自分で監修したから性能もわかっている。もう選択肢は"カリノ"一択でした」


メリット多数!"カリノ"を導入して良かったこと。

とにかく焼きやすいです。薪窯の場合、放っておけるのは最初の2~30秒だけで、それ以降は小まめに生地をいじらないと綺麗に焼けません。しかしカリノは放っておいても綺麗に焼けるので、焼成の1分半の間に次の工程の準備ができたりと作業効率があがります。それに扉のガラス窓から焼成の様子が確認できるので安心できますね」

 

■"カリノ"で通販用ピッツァを焼成する坂本シェフ 
■坂本シェフもお気に入りの窓。焼成の様子が確認できる。

「ecoモードで電気代も節約できるし、電気式なので火災の心配も少ないのがありがたいです。それに薪窯と比べると作業していてもほとんど暑くないので働く人にも優しいですね。ガス窯だと電源を切った後でも熱がこもるので2時間はフードをつけっぱなしにしたりと空調費もかさむらしいんですがその心配もない。いろんな所でコストが下がってると思います


まるでお店で食べる焼き立てピッツァ!

それではさっそく通販用ピッツァを試食させていただく。同店では通販用ピッツァは「常温で40分ほどかけて解凍し、オーブントースターで温める」という食べ方を推奨しているため、そのやり方にのっとって今回は特別に通販用の冷凍ピッツァを解凍→オーブントースターで再加熱していただいた。

 

■再加熱した通販用の冷凍ピッツァ。焼き立てそのものだ。 
■左が焼き立てピッツァ、右がさきほどの通販ピッツァ

ご覧のとおり、お店で出てくる焼き立てのピッツァと何の遜色も無い。香ばしい香りに湯気が立ち上る熱々のチーズ、どう見ても焼き立てのピッツァである。さらに坂本シェフいわく「グランツァの生地は国産の全粒粉を48時間かけて低温長時間発酵させてます。生地の味も楽しめるピッツァです」とのことで、食べてみるととにかく生地が美味しい。香りと味はもちろん、もちもちした食感が食べ応え抜群だ。さらにこの日は坂本シェフみずから"カリノ"を使って通常の焼き立てピッツァとの比較もしてくれたが、さきほどの通販用ピッツァと並べてみてもまるで違いは感じられない。改めて遜色の無さがよくわかる。

「"カリノ"は薪窯と違って、熟練した技術と経験が無くても綺麗に焼けるのも魅力です。コロナ禍でイートインの収益を上げるのが難しいなか、この通販事業を始めたおかげで月に数百枚単位の注文が来るようになりましたし、グランツァのSNSを見た遠方のお客様からの注文が入るようになったり、今までの常連さんが贈答用に購入してくれたりと、とにかく商売の幅が広がりました

どんな苦境においても"攻めの姿勢"でのぞむ坂本シェフならでは。コロナ禍でも着々と新たな挑戦が実を結んでいる。


ただのピッツェリアではない、”総合イタリアン”

同店については通販だけでなくイートインの魅力もお伝えしておきたい。『ピッツェリア・ダ・グランツァ』では本格ナポリピッツァはもちろんのこと、豊富なパスタメニューやポルケッタなどの幅広いイタリア料理も楽しめる。

 

■店内の様子。1階は明るく活気のある空間。
■地下は落ち着いた空間で貸切等にも最適。


「実は本場ナポリのピッツェリアはピッツァと揚げ物だけというスタイルなんですよ。ですが、本店の洗足、2号店の洗足池ともに住宅街なのでお客様のニーズもさまざまです。であれば、いろんな料理をご家族みんなで楽しめる方が良いじゃないですか。グランツァはパスタメニューも豊富ですし、肉料理・魚介料理も揃えています。"今日はパスタの気分だな"なんてときでも大丈夫。色んな料理が楽しめる"総合イタリアン"だと思ってもらえればと思います」

■イタリア料理のポルケッタ(豚肉のロースト)。


これからも貫き通す、"攻めのマインド"

最後に今後の展望を伺った。

「まずイートインの店舗を増やしたいです。多店舗展開は創業当時から視野に入れていたので、実はメールアドレスも複数店舗分用意してあるんです。雇用創出という社会貢献にもつながるのでこれは是非やりたいですね。それと僕の持っている技術やノウハウを活用したコンサルティング事業はさらに拡大しようと思っています。現在でも問い合わせは多くいただいているので、僕自身もそういった需要に応えていきたいですね」

"やりたいことはたくさんある"と坂本シェフ。今後も"攻めの姿勢"を信条とした躍進が続きそうだ。

坂本大樹オーナーシェフPROFILE

「ピッツェリア・ダ・グランツァ」オーナーピッツァイオーロ。18歳からイタリア料理の修業を始め、ナポリピッツァの魅力を知る。2012年に「ナポリピッツァ職人選手権日本大会2012」クラシカ部門で優勝。現在、目黒区洗足ならびに大田区上池台にて「ピッツェリア・ダ・グランツァ」を2店舗展開しながら飲食店のコンサルティング業務も行う。

―― SHOP INFO ――

ピッツェリア・ダ・グランツァ洗足本店


〒152-0012 東京都目黒区洗足2-25-13
Tel. 03-6421-6969

営業時間  Lunch  11:30~14:30(L.O.14:00)
Dinner  17:00~22:30(L.O.21:00)
定休日  なし
※営業時間や定休日は変動する場合がありますので、公式サイトでご確認ください。
公式食べログ
公式instagram
通販用ピッツァ購入サイト

ピッツェリア・ダ・グランツァ洗足池(2号店)


〒145-0064 東京都大田区上池台2丁目37-6
Tel. 03-6421-9696

営業時間  Lunch  11:30~14:30(L.O.14:00)
Dinner  17:00~22:30(L.O.21:00)
定休日  なし
※営業時間や定休日は変動する場合がありますので、公式サイトでご確認ください。
公式食べログ